「メガネさん、時間になったよ!」紙一枚が変えたAさんとの関わり

水中毒のあるAさんは、水の時間をめぐって毎日支援者と言い争いになっていました。「何時に飲もうね」と言葉で約束しても、待てない。そんな繰り返しの中で、ふと思いついた「紙に時間を書く」という方法が、Aさんの待ち方を大きく変えました。

支援って、言い争うことじゃないはずなのに

施設で働く人も、利用者さんの家族も、きっと同じ思いを持っているはずです——「もっと穏やかに関わりたい」と。でも現場では、毎日同じやり取りが繰り返されて、気づけば言い争いになってしまうことがある。そんなリアルと、そこからの気づきをお伝えしたいと思います。

毎日繰り返される、不毛なやり取り

Aさんはとても穏やかで楽しい方です。でも、水分に対するこだわりがとても強く、水の時間をめぐる支援者とのやり取りが毎日の課題でした。

「何時に飲もうね」と約束しても、待てずに「まだ!?」「水が飲みたい!」と声を荒げてしまう。支援者と言い争ううちに時間が来て飲む。次の約束をしても、また同じことが起きる——その繰り返しでした。

😔 毎日のループ
  • ・「何時に飲もうね」と約束する
  • ・待てずに「まだ!?」と声を荒げる
  • ・言い争いながら時間が来て飲む
  • ・また同じことが繰り返される

「何時に飲もうね」と伝えるたびに思っていました。なんて不毛なんだろう、と。でも、どうすればいいのかもわからなかった。

紙一枚が、全部変えた

ふと思い出した「自閉症と視覚」の話

ある日、たまたま落ち着いていたAさんと水の時間の約束をしていた時のことです。頭の中にふとよぎった言葉がありました——「自閉症の人は視覚優位な人が多い」「言葉は消えてしまう」。研修や勉強の中で聞いたことのある話でしたが、その瞬間、目の前のAさんとつながった気がしました。

思いつきで、紙に書いてみた

「とりあえずやってみよう」と、近くにあった紙に水を飲む時間を書いて、Aさんに見せながら言いました。「この時間になったら飲もうか。」最初は5分後という短い設定にしました。難しい話ではなく、ただ「待てる時間」から始めようと思って。

Aさんの表情が、いつもと違った

いつもなら「まだ!?」と声を荒げるAさんが、その日は違いました。嬉しそうに紙を見ながら、ゆっくりソファに座って、時計と紙を交互に確認していたのです。

💬 そして設定した時間が来ると——

「メガネさん。時間になったよ。」

Aさんから教えてくれたんです。自分から。

少しずつ、時間を伸ばしていった

それからは少しずつ約束の時間を伸ばしていきました。視覚的に「見通し」を持てることで、Aさんは安心して待てるようになっていきました。そして、約束を守れたことでAさんと支援者の間にポジティブな関わりが生まれ、「時間の約束カード」はAさんの支援の中に自然と定着していきました。

💡 この経験から気づいたこと

言葉で伝えた約束は、話し終わった瞬間に消えてしまう。でも紙に書けば、Aさんはいつでもそれを見て確認できる。「待てない」のではなく、「見通しが持てないから不安だった」だけだったのかもしれない。支援の答えは、いつも利用者さんの側にあるんだと思わされた出来事でした。

次回も、施設での支援を通じて気づいたことをお伝えしていきます。

保護者の方へ

お子さんが「待てない」「約束を守れない」と感じることはありませんか?

もしかしたら、それは言葉で伝えた約束が「見えない」からかもしれません。時間割や予定を紙に書いて見せるだけで、驚くほど落ち着いて待てるようになることがあります。

難しいことではありません。紙に時間を書く、それだけでいいんです。

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